相続は「誰が、何を、どう受け継ぐか」を家族で確認し、必要な公的手続を進めるプロセスです。期限がある手続もあるため、全体像を早めに掴んでおくと落ち着いて進められます。ここでは日本の相続手続の標準的な流れと期限、要点を整理します。
相続の全体フロー(まずはここから)
死亡の届出と直後の実務
死亡届(7日以内)・火葬許可などを市区町村で。
預貯金は口座が停止されることがあるため、費用立替に備えて家族間で共有。預貯金の「仮払い制度」を使えば、各金融機関ごとに上限150万円まで単独引き出しが可能(条件・計算式あり)。生活費・葬儀費の当座対応に使えます。
遺言書の有無確認
自筆証書遺言が法務局に保管されている場合は検認不要で内容確認が可能。自宅保管の自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要。
相続人の確定(戸籍収集)と相続財産の把握
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍等を取り寄せて相続人を確定。
資産(不動産・預貯金・有価証券・保険)と負債(借入・保証・未払)の遺産調査を一覧化。
承認・放棄の選択(3か月以内が原則)
単純承認/相続放棄/限定承認(相続人全員で選択)のいずれかを家庭裁判所へ。熟慮期間は原則「相続開始を知った時から3か月」。やむを得ない事情があれば期間伸長の申立が可能。
遺産分割(話し合い→協議書作成)
法定相続分・遺留分・特別受益・寄与分等の論点を整理し、合意内容を遺産分割協議書に。
預貯金解約、証券名義変更、保険金請求の根拠資料になります。
各種名義変更・登記
不動産の相続登記は義務化。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請(違反は過料の可能性)。過去の相続分も対象
税務手続(10か月/4か月の期限)
相続税の申告・納付:10か月以内(基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」)。特例適用の有無もここで判断。
被相続人の準確定申告:4か月以内(年の途中で亡くなった方の所得税申告)
時系列チェック表(期限のある要点)
時期の目安 | やること | 根拠・メモ |
|---|---|---|
直後〜1か月 | 死亡届、葬儀、口座凍結への対応(仮払い制度の検討) | 仮払いは各金融機関ごと上限150万円。 |
〜3か月 | 相続人確定、財産と負債の調査、放棄/限定承認の選択 | 熟慮期間3か月。事情により期間伸長申立あり。 |
〜10か月 | 遺産分割協議、相続税の申告・納付 | 申告期限は10か月。基礎控除・各種特例を確認。 |
〜3年 | 不動産の相続登記(義務) | 相続を知った日から3年以内。過料規定あり。 |
〜4か月 | 被相続人の準確定申告 | 相続開始を知った翌日から4か月以内。 |
法定相続人と相続の選択肢(超要約)
法定相続人の順位:①配偶者は常に相続人、他は子→直系尊属→兄弟姉妹の順。
単純承認:資産も負債も承継。
相続放棄:権利義務を受け継がない(3か月以内が原則)。
限定承認:資産の範囲内で債務を弁済(相続人全員で)。
借入金や連帯保証が見つかった場合は、熟慮期間内に家庭裁判所への申述を最優先に。
遺産分割の基本視点(揉めないための設計)
遺言の有効性確認(方式・内容・検認等)
法定相続分と遺留分を意識して案を作る
特別受益(生前贈与)や寄与分の確認
合意内容は遺産分割協議書へ(不動産・預金・有価証券の特定と分配方法を明記)
よくある実務ポイント
預貯金の仮払い制度
遺産分割前でも、相続人は口座ごとの計算式に基づき、単独で引出可(各金融機関ごと上限150万円)。家庭裁判所の仮処分で上限超も可。必要書類は戸籍類や法定相続情報一覧図、各行の書式など。
相続税の基礎控除
「3,000万円+600万円×法定相続人」。特例(配偶者の税額軽減・小規模宅地等)適用の有無で申告要否が変わることあり。配偶者の税額軽減は申告が必要。
相続登記の義務化
2024/4/1開始。相続を知った日から3年以内に登記申請が必要。未登記の過去相続も対象。
準確定申告
4か月以内。医療費控除・年金・不動産所得など対象の有無を確認。
進め方
〜1週間:遺言の有無確認/相続人と財産のリスト開始/仮払い制度を使うなら各行へ連絡。
2〜4週間:戸籍収集・法定相続情報一覧図を取得、財産目録の精度を上げる。
〜3か月:借入・保証の有無を最終確認し、必要なら放棄・限定承認を申述。
〜10か月:分割協議→協議書→名義変更・登記準備、相続税の試算と申告資料集め。
〜3年:不動産の相続登記を完了。
長谷寺の視点
相続は、手続きだけでなく、家族の状況や暮らし方にも関わります。
長谷寺では、必要に応じて 司法書士・税理士・行政書士などの士業と連携しながら、
無理のない進め方を一緒に整理することができます。
困ったとき、迷ったときは、
「どう進めればいいか」を決めるところからでも大丈夫です。
長谷寺では士業の相談も可能です。
まずはお問い合わせください。
(相談内容に応じて、適切な専門家をご紹介することもできます)
まとめ(要点の再確認)
最初に全体像(人・財産・期限)を把握する
3か月/10か月/4か月/3年の各期限に注意
不動産は相続登記が義務(3年以内)
当座資金は預貯金の仮払い制度の活用を検討(上限150万円/金融機関)
税務は相続税10か月・準確定申告4か月を起点に逆算する
記事を書いた人
加藤大宗
神奈川県厚木市・蓬莱山長谷寺 僧侶。永平寺東京別院で修行を積み、慶應義塾大学を卒業後、葬儀・法事・供養などの仏事に携わる。 現在は慶應義塾大学大学院にて産業心理学の勉強中。仏教や供養に関する知識を分かりやすくお伝えする記事を執筆しています。
